高齢者や障がい者の身体を介護スタッフが人力で抱えるのではなく、電動リフトなどの移乗機器を使用して移動させることをノーリフティングケアといいます。ノーリフティングケアにより高齢者の身体を支える肉体的負担が減り、介護職に心のゆとりができて高齢者への接し方も改善されるようになりました。移乗介助を人力に頼ると、それだけで介護職の体力や精神面が消耗してしまうことが多く、他の業務に支障が出ると言っても過言ではなかったのです。
しかし、機器を使うことに対して心理的抵抗を覚えるスタッフや高齢者もおり、導入をとまどう介護施設も少なくありませんでした。そこで、徐々にノーリフティングケアのメリットが周知されるようになり、普及が進むようになっています。ノーリフティングケアの要介護者側のメリットとしては、まず高齢者が介護職に遠慮せずリラックスして移乗できることが挙げられます。また、電動リフトなどの機械なら人力の不安定さがなく、転倒事故のリスクもほとんどありません。
ノーリフティングケアが導入されてからトイレ誘導が容易になって、おむつの使用が減り、尿路感染症の防止にもつながっています。さらに、高齢者も気軽に移動できるようになり、積極的にイベント等へ参加する意欲を見せるようになったケースも増えました。離床の機会が増加することによって、高齢者がリハビリに励むようになるケースも見られます。このように、高齢者にも介護職にもメリットが大きいノーリフティングケアは、介護現場に欠かせない改善策として注目されているのです。